伊豆沼・内沼では、四季を通してさまざまな動植物を観察することができます。自然観察カレンダーでは、伊豆沼・内沼の自然を代表する生き物とその見どころをご紹介します。


 

 寒い冬が終わり、伊豆沼に春が訪れると、岸辺のあちこちで「バシャバシャ」という音が聞こえてきます。この音は、コイやフナが産卵する時の水しぶきの音です。水温の上昇や雨をきっかけに、沼の深場にいた大きな魚たちが、岸辺に大群で押し寄せます。背中が見えるほどの浅瀬まで危険をかえりみずにやってくるため、ミサゴなどに捕まることもあります。
 伊豆沼の周辺では、昔からコイやフナの産卵は“ほどけ”と呼ばれ、地域にとって沼の恵みを味わえる貴重な機会でした。伊豆沼・内沼では、ほどけの魚を獲るための伝統的な“つかご漁”も行われています。

  コイの産卵(wmv 1.84MB)
  フナの産卵(wmv 4.21MB)
  タモロコの産卵(wmv 2.68MB)

 タカのなかまのミサゴは、魚獲りの名手です。春から夏の伊豆沼でよく見ることができます。沼の上空を飛びながら獲物を見つけると、ホバリングし、一気に急降下しダイブします。沼でよく捕まえているのはフナのなかまで、30センチ近い魚も軽々とさらっていきます。

  ミサゴの狩り(wmv 1.52MB)

 初夏の伊豆沼では、岸辺のあちこちから、「ギョギョシ、ギョギョシ」という大きな鳴き声が聞こえてきます。この声の正体は、オオヨシキリという野鳥です。オオヨシキリは春から夏が繁殖期で、オスは岸辺のヨシ原に縄張りを作ります。鳴いているのはオスで、自分の縄張りを主張するために鳴いています。よく聞くと、隣りの縄張りのオスと交互に鳴きあっていることもあります。地元では、「ゲゲツ」と呼ばれています。

  オオヨシキリの鳴き声(+フナの産卵)(mp3 307KB)

 梅雨が明けるころの沼では、水生植物の花が咲きます。大きなピンクのハスや、黄色い花のアサザ、小さく白い花のガガブタなど、沼の水面がカラフルに彩られます。

  ハス群落(wmv 2.74MB)
  アサザ群落(wmv 4.04MB)

 チョウトンボは、伊豆沼を代表するトンボの一種です。大きさはシオカラトンボくらいで、翅と体が黒く、ひらひらと飛ぶことからチョウトンボと名付けられました。遠くから見ると全身真っ黒ですが、近くから見ると、オスは黒紫に、メスは黒緑に輝き、光の反射によってもさまざまな美しい色に見えます。オスは水草が多い水面上に縄張りを作り、オス同士でときに激しく喧嘩をします。また、岸辺で集団で飛翔することもあります。

  チョウトンボ(wmv 876KB)
  チョウトンボ(wmv 1.22MB)

 伊豆沼で夏によく見るサギのなかまは、チュウサギです。水生植物で緑に染まった沼を真っ白な体のチュウサギが飛ぶととても目立ちます。チュウサギは、器用なことに、ハスの葉の上に降り立つことができます。葉の上から小魚などの獲物を狙っている姿を見ることができます。

  チュウサギ(wmv 4.33MB)

 夏までに沼の周辺で繁殖したツバメたちは、秋になり、南に渡る前に、伊豆沼に集まります。昼間は、沼や周辺の田んぼで食物を獲りますが、夕方になると沼に集団で帰って来ます。数百羽のツバメが縦横無尽に飛ぶ光景は壮観です。しばらく沼の上を飛んだ後、ヨシ原に降りて眠ります。

  ツバメのねぐら入り(wmv 1.88MB)
  ツバメのねぐら入り(wmv 1.54MB)

 マガンは、伊豆沼を代表する冬の鳥です。毎年数万羽のマガンが越冬のために伊豆沼にやって来ます。夜は沼の水面で寝ますが、朝になると一斉に飛び立ち、沼周辺の田んぼで落ちモミなどを食べます。日の出をバックにマガンの群れが飛び立つ光景や、その羽音はとても印象的です。また、夕方になり沼に帰ってくるマガンも見ごたえがあり、きれいなV字形に並んで帰ってきたマガンが、沼の近くでは落雁という独特の飛び方で高度を下げる様子を見ることができます。

  マガンの飛び立ち(wmv 2.48MB)
  マガンの飛び立ち(wmv 3.64MB)
  マガンのねぐら入り(wmv 831KB)

 伊豆沼には数千羽のオオハクチョウが越冬のためにやって来ます。伊豆沼・内沼は、オオハクチョウの日本一の越冬地です。沼の中にはオオハクチョウたちの食物が豊富にあります。水生植物の地下茎が大好物で、特にマコモの地下茎とハスの地下茎(レンコン)を好んで食べます。ハスのレンコンは、底泥の中に埋まっていることが多いため、オオハクチョウは水面上に脚から後ろを残し、逆立ちをした状態で水底を掘り起こし、レンコンを食べます。泥の中に顔を入れるため、首から上が泥だらけになることもあります。

  オオハクチョウの採食(マコモ)(wmv 1.76MB)
  オオハクチョウの採食(レンコン)(wmv 1.67MB)

 伊豆沼が最も寒いころ、オジロワシがやって来ます。凍った沼の中央部に降り立つことが多いですが、その姿は遠くから見ても威厳があります。カモなどを捕まえて氷上で食べていると、意外なことにカラスに横取りされることもあります。


  オジロワシの獲物を奪うハシブトガラス(wmv 1.63MB)

 ミコアイサは、魚やエビを食べるカモの仲間で、特にオスは白と黒のかわいらしいツートンカラーでパンダガモとも呼ばれています。ミコアイサは集団で狩りをします。集団で同じ方向に泳ぎながら、タイミングをそろえて潜ります。しばらくすると浮かびあがって、再び潜ることを繰り返します。狩りは共同作業でも、食物は奪い合いです。食物をくわえて浮かび上がったミコアイサは、他のミコアイサに奪われないように集団から一目散に離れます。
 水中に潜って狩りをする水鳥の仲間では、ミコアイサの他にカワアイサやカンムリカイツブリなどを見ることができます。

  ミコアイサの狩り(wmv 1.41MB)
  カワアイサの狩り(wmv 1.43MB)
  カワウの狩り(wmv 2.72MB)