伊豆沼・内沼は、宮城県北部の平野にある自然湖沼です。面積は、491ha(伊豆沼369ha、内沼122ha)で県内最大ですが、水深は平均80cm、最大1.6mと浅いのが特徴です。沼の周辺には広大な水田が広がっており、沼の水が水源として利用されるとともに、洪水調整の役割も果たしています。水深が浅いため、沼の中央部まで水生植物が繁茂しており、水生昆虫や魚類、鳥類など多種多様な生き物が生息しています。秋から冬に極東ロシアから渡ってくるガンやカモ、ハクチョウ類の貴重な越冬場所であることから、ラムサール条約の登録湿地として国内で2番目に指定されました。

 マガンは夜間に沼で休息し、早朝に一斉に飛び立って周辺の水田に向かいます。伊豆沼・内沼のマガンが一斉に飛び立つ時の羽音と鳴き声は荘厳で、環境省の「残したい“日本の音風景100選”」にも選ばれています。

マガンの鳴き声と羽音(mp3 470KB)
(10秒後に羽音とともに飛び立ちます)

 伊豆沼・内沼とその周辺には、毎年数万羽のマガンが越冬するためにやって来ます。越冬場所でのマガンは、昼間は水田で落ち籾などを食べ、夜になると沼で休息をとって生活します。数万羽のマガンたちを養うためには、広くて安全な沼と広大な水田が必要ですが、このどちらをも備えた伊豆沼・内沼は、まさにマガンたちの聖域と言えます。
 マガンは家族のきずなが強い鳥で、普段は父、母、子供たちの5〜7羽で行動しています。田んぼに行ったら、マガンの家族の様子を観察してみましょう。きっとマガンを身近に感じられると思います。

 

 伊豆沼・内沼には、毎年2,000〜3,000羽のオオハクチョウがやって来ます。伊豆沼・内沼は、オオハクチョウの日本一の越冬地です。沼の堤防からは、大きなハクチョウが、頭上を飛んでいく迫力満点の光景を見ることができます。
 沼にやってきたハクチョウたちは、周辺の水田や沼の中で餌をとります。沼の中では、マコモの地下茎やハスの地下茎(レンコン)を一生懸命掘っている様子を見ることができます。時には逆さまになり、水面上にお尻だけを出して、レンコンを掘り出します。

 
 伊豆沼・内沼には、さまざまな水生植物が生育しており、夏になると色とりどりの花を咲かせます。特にきれいなのがハスの花です。青空の下、大きなピンク色のハスの花が沼中に咲き乱れる景色は、とても印象的です。ハスが咲くころに沼の岸辺に立つと、ハスの花のほのかな香りが風に運ばれてきます。
 ハスの花は、早朝に開きはじめ、午前中に最も開き、午後になるとしぼみます。これを3〜4日間繰り返し、やがて花弁を落とします。花の見ごろは7月中旬〜8月中旬です。みなさんも、ぜひ一度極楽浄土の世界を味わってみて下さい。

 ハス以外にも、白くて小さい花のガガブタや、黄色い花のアサザなど、さまざまな水生植物に彩られます。
 にぎやかなのは植物だけではありません。黄色と黒の縞模様が印象的なウチワヤンマや、美しく輝く羽根をもつチョウトンボ、ハスの葉に降り立ち獲物を狙うチュウサギなど、夏の伊豆沼・内沼では、いろいろな生き物を観察することができます。