伊豆沼・内沼の水質は、かつては透明度が非常に高く、沼の底を泳ぐ魚を見ることができました。しかし、今では一年を通して透明度が低く、濁っています。
 環境省が毎年測定している公共用水域の水質では、伊豆沼は全国の湖沼の中でも常にCODが高く、年間平均値が8〜10mg/Lを推移しています。
 水質悪化の主な原因と考えられているのが、上流域からの泥の流入や農地からの排水、沼で過剰に繁茂した植物の枯死体です。

 伊豆沼・内沼は、もともと谷だった場所に長い時間をかけて土砂が堆積してできたくぼ地です。土砂の堆積は現在でも続いており、その速度は1年間におよそ1mmと推定されています。しかし、近年になってその堆積速度が速くなっています。右の図は、沼の水深分布を1995年と2007年で比較したもので、2007年には1m以上の深場が少なくなっていることが分かります。水深が浅くなることで、底質が巻き上がりやすくなったり、沼の生態系への影響が懸念されています。

 マガンは、かつては日本中に広く分布しており、江戸時代には関東平野でも越冬していました。しかし、狩猟や越冬場所、採食場所の減少などにより、今から40年ほど前には、個体数がわずか数千羽まで減少してしまいました。その後、天然記念物の指定など、保護策がとられるようになると、マガンの個体数は年々回復していきました。現在では、約20万羽が国内で越冬しますが、昔と大きく異なるのは、その越冬場所が伊豆沼を中心とする宮城県北部に集中していることです。集中的に分布することの問題点として、病気が発生した時に蔓延しやすいことや、沼でフンをすることで栄養負荷が多くなること、他の鳥の食物や生活場所を奪ってしまうことが懸念されます。

 伊豆沼・内沼のハスは、夏には水面をピンク色に美しく染め、観光資源としても重要な資源です。その一方、植物体が大きいため、ハス群落の下には日が当らなくなり、他の水生植物が生育できなくなってしまいます。伊豆沼・内沼のハスは、これまで約10年の周期で、増水による消滅とその後の増加を繰り返してきました。しかしながら、近年の排水施設の発達により、増水によるハス群落の消滅が起こりにくくなりました。その結果、現在は水面の約8割をハス群落が占めるようになり、他の水生植物が減少傾向にあります。

 伊豆沼・内沼では、昔から漁業が行なわれており、毎年約30トンの漁獲量がありました。このうちの約半分は、ゼニタナゴやモツゴなどの小魚類でした(右図)。ところが、1996年を境に漁獲量が約3分の1に減少してしまいました。とくに減少が著しかったのは、小魚類でした。小魚類と置き換わるようにして漁獲されるようになったのが、ブラックバス(オオクチバス)でした。1996年を境に沼の環境に大きな変化はなかったことから、小魚類の減少はブラックバスの捕食が原因だと考えられました。その後もブラックバスは増加し続け、小魚類やエビ類はほとんど漁獲されなくなり、それまで数多く見られたゼニタナゴも姿を消してしまいました。また、ブラックバスの影響は水中だけにとどまりませんでした。小魚やエビを餌にする水鳥のなかまも、ブラックバスの増加後に個体数を減らしました。このように、伊豆沼・内沼では、ブラックバスの侵入が漁業や沼の生態系に大きな影響を及ぼしました。