伊豆沼・内沼では、水質の変化やハスの増加などにより、アサザやクロモといった水生植物の種数や数が減少しています。水生植物は、水生昆虫や魚類の生息・産卵場所になったり、水中の栄養を吸収することで水質を浄化するなど、沼の生態系の中で重要な位置を占めています。そのため、伊豆沼・内沼では、伊豆沼・内沼自然再生事業の一環として、かつて豊富に生育していた水生植物の増殖や、沼への移植を行っています。

 クロモは、沼を代表する沈水植物で、かつては豊富に生育していましたが、現在ではほとんど見られなくなりました。そのため、屋外水槽での増殖や、沼への移植を行っています。

 水生植物の種子は、底質中で休眠状態になり、何年も発芽せずに眠っていることがあります(埋土種子)。このような種は、光や温度などの刺激を与えると休眠状態から覚め、発芽することがあります。伊豆沼・内沼の底質を採取し、種子の発芽を促したところ、20年以上生育が確認されていなかったジュンサイなど、かつて沼に生育していた水生植物が発芽しました。このようにして埋土種子から発芽した水生植物は、屋外水槽で系統保存し、沼での復元を目指します。

 1990年代前半の伊豆沼・内沼には、ゼニタナゴが数多く生息していました。しかし、90年代後半に増加したブラックバスの影響により、ゼニタナゴをはじめ小魚類やエビ類が激減しました。現在では、沼本体ではゼニタナゴをほとんど見ることができなくなりました。そこで、伊豆沼財団では、ゼニタナゴなどの希少魚類を沼に復元するために、屋外水槽などで保護・増殖しています。

 ゼニタナゴなどのタナゴ類は、二枚貝の中に卵を産み付けるため、二枚貝の生息が欠かせません。伊豆沼・内沼では、底質の悪化や、二枚貝の幼生が寄生するハゼ科魚類の減少によって二枚貝の繁殖が抑制されることで、二枚貝の生息数が減少するとともに貝の大型化が進んでいます。そこで、沼に移殖するために、屋内水槽で二枚貝類の増殖を行っています。