伊豆沼方式のブラックバス駆除の取組みでは、ブラックバスの生活史に合わせた方法で駆除を行うことによって、ブラックバスの増殖を総合的に抑制することを目的としています。
 ブラックバスのメスは、1回の産卵で2万粒もの卵を産みます。オスは卵や卵からかえった稚魚を外敵から保護するため、多くの稚魚が生き残ります。そのため、繁殖を阻止することで、ブラックバスの増殖を効率良く抑制できると言えます。
 ブラックバスの稚魚は、群れで行動する性質があります。小さいうちは岸辺の表層を泳ぎながらミジンコなどの動物プランクトンを食べますが、全長2センチくらいになると、魚を食べるようになります。そのため、在来魚類を守るためには、ブラックバスの稚魚の発生をできるだけ抑制することが重要だと言えます。

 伊豆沼では、2004年に結成されたバス・バスターズにより、人工産卵床を用いた卵の駆除と卵を守る親の駆除、そして、三角網を用いた稚魚の駆除を行ってきました。バス・バスターズによるブラックバスの繁殖抑制活動を始めてから、ブラックバスの捕獲数は年々減少傾向にあります。

 繁殖を抑制するには、卵や稚魚よりも前の段階で駆除を行うことも有効です。ブラックバスは、繁殖期になると、まずオスが岸辺の浅瀬にやってきて、産卵床(卵を産む場所)を掘り、その周りに縄張りを作ります。やがてメスがオスのもとにやってきて産卵します。このとき、産卵床に縄張りを作っているオスは、産卵床から離れようとしないため、電気ショッカーボートや刺網によって簡単に捕獲することができます。

 伊豆沼では、繁殖期以外の駆除にも取り組んでいます。秋から冬にかけて、ブラックバスの幼魚は越冬場所を求めて岸辺を移動します。このときに定置網を仕掛けることで、ブラックバスの幼魚を効率良く捕獲できます。他にも、刺網を使った成魚の駆除も行っています。
バス・バスターズとは?




 以上のように、伊豆沼・内沼では、ブラックバスの生活史に合わせて、さまざまな方法で駆除に取り組んできた結果、近年ではブラックバスがピーク時の数分の1に減少し(下図@)、ブラックバスによって大きく減少していた(下図A)伊豆沼・内沼の魚類も、最近、回復し始めています(下図B)。
   
  伊豆沼・内沼での駆除活動が一冊の本になりました。
「湖沼復元を目指すための外来魚駆除・魚類相復元マニュアル〜伊豆沼・内沼の研究事例から〜」